『王を輔弼し、諸国に弁し、気づけば、着いた「文」の極致──。』
【秦王都 咸陽】
■中華統一の絵図を論ずるが…!?
王宮に集まる文官たち
「趙だけに目を奪われるな」
「魏と楚も大群をこちらに向けているのだ」
「韓ら他の三国にも怪しい動きがある」
「六国全ての動きを事細かに見ておかねば…」
「再びあの合従軍が興るということも……」
一同に不安がよぎる。
鋭い目つきの昌平君「合従軍は興らぬ」
文官達「!」「丞相」「!」
昌平君「四年前の合従軍は 二十年間 大楚の宰相を努めた春申君の名の信頼と、王騎・劇辛を討った李牧の名の信頼の二つが重なって興りえた。だが春申君はすでに死去し、李牧も列国に対して合従軍の失敗の汚名返上はまだできていない。あれ程 大がかりなものを興せる人物は今の中華に見当たらぬし、そもそも──
あんなものは この俺が二度と作らせはせぬ」
自信満々に言い放つ昌平君。
政はその言葉を静かに聞いている。
介億「国間のつながりを妨害する“汚れ役”遊説の徒を外に多く放っておりまする」
文官たち
「……昌平君がそう言われるならば安心だ」
「…では やはり我々が思いきり攻めに…」
昌平君(見当たらぬとは言いすぎか、“東に鎮座”するあの人物だけはその力が未知数…念のために東への目を今から増やしておくか…)
地図上の斉国を見据える昌平君。
そこで立ち上がる政「昌平君」
文官たち「!?」「!?」「!?」
政「ならば次に刃を交える国は?」
緊張した面持ちで昌平君の言葉を待つ文官達。
昌平君「無論、予定通り、趙国です。黒羊という“楔”を活かし次が本当の…」
その時、急報が、、、
伝者「さっ 蔡沢様からの急報です」
「……こっ この伝書の封はたしか…」
文官達「蔡沢様から!?」「燕からか!?」
介億「封!?」
昌平君が伝書を睨む「………」
(朱と青の封……)
政(あの封はたしか……)
(“国運に関わる知らせ”の封──)
「こっちへ」
「早く」
伝者「ハハァ」
政(蔡沢から一体何が…………)
場所は変わり黒羊
信「引き継ぎに五日もかけたからもー安心だ。じゃー丘を頼んだぞ 蒙恬」
渕(五日のうち四日は飲んでただけだった…)
ゲロを吐きそうな兵士たち。
蒙恬「ああ 帰ってしっかり休めよ」
兵士(やっと行きやがった)
(やっと解放される)
信「何か引き継ぎ忘れたとこねーかな あと一日くらい…」
ギョっとする兵士たち。
兵士「いーから行けーー」
渕「かっ 帰りましょう信殿」
信「何か飲み足りなくね?」
尾平「十分飲んだし吐いたわ! おー残りたきゃお前だけ残れっ」
信「え いいかな」
楽華隊「残るなーー! さっさと行けー」
そこに咸陽から急報が。
「急報―― 咸陽本営から急報だーっ!!」
兵士たち「!?」「!?」
「『休戦』!」
「!?」
「『”一時”休戦』だ!!」
「!?」
蒙恬「休戦!?」
信「……?どことだよ?」
伝者「趙に決まってるだろ!」
「理由は分からぬが今より趙軍とは一時休戦だ」
「もしこちらから仕掛けたら重罪に処すと厳しく…」
「とっ とにかく伝えたぞ」
「大至急配下達の周知徹底をはかれ」
蒙恬「………」
伝者「よいな これは超軍側も合意のものだ」
「しっ しかと伝えたぞ」
「俺は急いで南の丘に行くっ」
信「………」
「こ 黒羊取っといて休戦!? 趙も合意って……」
「一体どういうことだ…」
「テン」
河了貂「わっ 分からないよ。ただ説明もなく“一時”休戦ってことは…」
青公「蒙恬様 咸陽が…」
蒙恬「ああ、相当慌ててる」
(あの先生が…)
「何か突発的に想定外のことが起こったんだ」
空を見上げる蒙恬(……)
(嫌な予感がするな……)
いつの間にか雲行きが怪しくなっていた。
場所は変わり咸陽
ナレーション:
そして数日後、咸陽に ものものしい警備の中 国籍不明の一旅団が到着した
馬車から降りてくる人物に驚く兵士たち。
兵「……………」
(そ そんなバカな…)
(本当に…)
(本物なのか)
ナレーション:
「史記秦始皇本紀」より抜粋−−−
始皇十年。(紀元前237年)
斉・趙来置酒。斉と趙が(秦に)来朝した−−−
車から降り立ったのは蔡沢、斉王、そして李牧の3人。
兵士(李牧っ…)
(本物の李牧だ…)
(いやそれよりこの御仁は…)
宮殿に入った蔡沢に文官達が一斉に詰め寄る。
「一体どういうおつもりですか蔡沢様っ」
「今最大の敵となっている趙国の李牧を連れてくるなど」
「しっ しかも もっ もう一人っ…」
「せっ せ せ 斉の大王ご本人まで連れて来るなど…っ」
「しょっ…正気の沙汰ではありませんぞ」
「何の相談もなくこんなっ」
政、昌文君、昌平君、そして介億。
全員が戸惑っている様子。
蔡沢「ヒョッヒョ 独断・無断で動いたことは心から詫びる。じゃが段取りを踏んでおると 危険度も増すし 何より実現が困難であったろうて」
文官「当たり前です って言うかっ……」
「一体何であの二人も自らこの敵地のど真ン中にッ」
昌平君「……さすがに話が見えてきませぬ」
「蔡沢様」
「まずは」
「そもそも“なぜあの二人”を」
蔡沢「“一人”じゃ」
文官「はァ!?(汗)」
政「斉王か」
一斉に振り返る文官達「!?」「!?」
「!?」
蔡沢「………」
「いかにも」
またしても一斉に振り返る文官達。
「!?」
「!?」
蔡沢「斉王が咸陽まで来るには趙国を通らねばならぬ。その旨 趙に伝えたところ、無事に通す条件として金とは別に、李牧も同行して秦王と謁見する機会をと言われたので“可”として連れて来た」
文官「かっ 勝手に何をっ 王をないがしろにしてそんなっ…」
「大逆罪ですぞ蔡沢様っ!!」
蔡沢「たしかにな、ならば後でこの小首はその辺の棒キレで叩き折ればよい。じゃがな、かつて東帝・西帝と中華に恐れられた時代もあった 東の斉王と西の秦王が直接会って対話する意味を考えると この干からびた首など蝶の羽より軽いものだぞ。大王 この蔡沢の最後の仕事としてお引き受け頂けませぬか?列国を滅ばさんとする王として、それを東の玉座で受けて立つであろう斉王と舌鋒をお交わし下さい」
■蔡沢が企てた秦斉大王会談!! 敵地に自ら乗り込んだ斉王との外交戦の幕が開ける!!
次号、秦斉両王が交わす内容は…!?
キングダム ネタバレ 487話へ続く!!